2018年07月13日

ストレス耐性菌ってどんな菌? - フラジリス菌の作用

腸内フローラの検査を行うと、レポートの評価項目の1つとしてストレス耐性菌について表示されることがあります。ストレス耐性菌とはどのような菌なのでしょうか?

 

今回のActivityではストレス耐性菌とされているフラジリス菌について解説します。まずは、その根拠となっている論文を紹介します(1)。

 

この論文では、ヒトから分離したフラジリス菌を自閉症マウスに摂取させるという実験を行っています。そうすると、自閉症マウスは健康なマウスに比べて腸内の物質が血液中に漏れやすい症状や行動などに特徴があるのですが、これがフラジリス菌の摂取によって改善されることを発見しました。

さらに、血中成分を詳しく調べると、自閉症マウスでは健康マウスより4EPS濃度が高く、血中4EPS濃度はフラジリス菌の摂取によって低下するという結果が出ました。4EPSというのは分子の名前で、無菌マウスではほとんど検出されないので、腸内細菌を介して作られていると推測されています。そして、4EPSを健康マウスに注射すると自閉症のような行動をとるため、4EPSが自閉症の原因の1つであることがわかりました。(これが全てではなく、自閉症の原因は他にもいろいろあります。)つまり、これらの結果はフラジリス菌が腸に住み着くと、血液成分に変化が生じて脳に作用し、行動にまで影響するということを示しています。

 

ストレス耐性菌という名前から期待してしまう作用からは肩透かしを食らったようでもありますが、この論文を根拠としてフラジリス菌はストレス耐性菌とされています。 

 

また、フラジリス菌には病原菌という側面もあります。むしろ、フラジリス菌は最近まで病原菌と考えられてきました。もっとも、フラジリス菌は病原性が非常に低く、多くの人の腸に存在している常在菌で、健康な人にとっては検出されても何の問題もありません。しかし、普段は無害でも、抵抗力が弱くなって別の菌に感染すると、その感染部位からフラジリス菌が分離されることがあります。ひどい悪臭を放つこともあり、重症化することもあるようです。

 

そのため、フラジリス菌については、菌そのものの作用よりも菌から抽出した成分の利用あるいは血中4EPS濃度を操作する方向での研究の発展が期待されるのではないかと思われます。

 

腸内フローラの研究はまだまだわからないことばかりで、名前負けどころか、能力が全く未知の菌もたくさんいます。言い換えれば、腸内フローラは宝の山ということです。AuBとしては、フラジリス菌に代わる病原性の低いストレス耐性菌を発見したいものです。

 

  1. Hsiao EY, McBride SW, Hsien S, Sharon G, Hyde ER, McCue T, Codelli JA, Chow J, Reisman SE, Petrosino JF, Patterson PH and Mazmanian SK. 2013. Microbiota modulate behavioral and physiological abnormalities associated with neurodevelopmental disorders. Cell 155(7):1451-63.