2017年07月28日

太りやすい腸内フローラを避けるにはどうするか

前回に続き、腸内フローラと肥満との関わりについてです。

http://aub.co.jp/activity/295

http://aub.co.jp/activity/238

太っている人の腸内フローラを痩せている人のものと比較すると、バクテロイデーテス門とファーミキューテス門の細菌数の比率が異なり、太っている人ではバクテロイデーテス門の細菌数の比率が低いことが報告されました(1)。

なぜこのような違いが生じるのでしょうか?

実は、バクテロイデーテス門とファーミキューテス門の細菌数の比率が肥満に影響することはマウスでも確認されています。また、無菌マウス(細菌が全くいないマウス)にそれぞれの腸内フローラを移植すると、太ったマウスの腸内フローラを移植された無菌マウスは痩せたマウスの腸内フローラを移植された無菌マウスより体脂肪量が増加することも発見されました(2)。

 

さらに、太ったマウスの腸内細菌は食物からエネルギーを獲得する能力が高いことも同じ論文で示されています(2)。つまり、太りやすい腸内フローラを持っていると、太りにくい腸内フローラでは消化できない食物も消化して、エネルギーとして吸収できると考えられます。これはこれで飢餓時の生存競争を生き残るのには有意義な能力なのですが、食糧事情が豊かな環境では肥満に繋がってしまうのです。

 

これらの結果は同じ親から同時に生まれてきたマウスのものなので、マウスの遺伝子の違いはほとんどなく、より正しく腸内フローラの肥満への影響が評価できています。ヒトの場合は太りやすさに影響する遺伝子のタイプがいくつか知られており、これらのタイプの違いなど考慮しなければならない条件がありますが、腸内フローラの違いが太りやすさに影響していることは事実です。

 

さらに、冒頭の論文では次のような結果も報告されています。それは、太っている人が低カロリー食でダイエットをしたところ、体重が減少し、バクテロイデーテス門の細菌数の比率が高くなったというものです(1)。この結果は生活習慣の改変が腸内環境を改善し、太りにくい体質に変えられる可能性を示しています。つまり、太りにくい生活習慣を心がける人は、腸内環境が改善し、ますます太りにくい体質になるということです。

現状、ダイエット目的の便移植(糞便を腸に移植することにより腸内フローラ全体を改変します)は人間では難しく、「結局は食事と運動なのか・・・」と思われるかもしれません。しかし、変えることができないヒト遺伝子と違って、日頃の生活習慣で改善できるということが、腸内フローラの良いところではないでしょうか。

 

また、人間の便移植についても、これから技術的な課題や倫理的な課題が解決されてハードルが低くなることも考えられます。そして、アスリートのパフォーマンス向上のための便移植は、AuBとしても重要な研究テーマの一つです。まだまだこれからのわからないことが多い分野ですが、今後の研究の進展に期待して頂ければと思います。

 

  1. Ley RE, Turnbaugh PJ, Klein S and Gordon JI. 2006. Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity. Nature 444(7122):1022-1023.
  2. Turnbaugh PJ, Ley RE, Mahowald MA, Magrini V, Mardis ER and Gordon JI. 2006. An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature 444(7122):1027-1031.