2017年11月10日

「脳腸相関」強制された運動はコンディションを悪化させる?

腹が据わる
腹が立つ
腹の虫の居所が悪い
はらわたが煮えくり返る
腑に落ちる

上に挙げたのはいずれもお腹に関わる慣用句ですが、このようにお腹の調子と感情が深く関わっていることは昔から知られています。
また、感情的に良くない状況だと胃の調子が悪くなったり、緊張すると便意をもよおしたり、逆に便秘になると気分が沈んだりすることがあります。こうしたストレスとお腹の調子の関係によって生じる現象は、自分の体験として覚えがあるかもしれません。
脳腸相関

これは、腸には多くの神経系が集まっており、脳と信号を伝達し合う関係にあるからです。

この脳と腸が密接に影響を及ぼし合う関係を「脳腸相関」と言います。

また、腸には多くの神経系が集まっていることは先ほど述べましたが、この神経系の機能には脳からの指示が無くても独立して働くものがあるため、「腸は第二の脳」とも呼ばれています。

 

しかし、本当にそうでしょうか?

生物は栄養を効率良く吸収するために、その単純な構造を進化させて、腸を獲得したと考えられています。そして、脳は腸を動かすための神経細胞が進化したものと考えられています。

つまり、脳は腸が効率良く機能するために発達した器官と考えられ、「腸は第二の脳」とは腸に対して失礼な称号で、生物学的には腸が主役であり、「脳は腸のおまけ」でしかないのかもしれません。

脳腸相関

話が少しそれてしまいましたが、「脳腸相関」という言葉があるほど脳と密接に関わっている腸ですが、最近はこの腸に常在している腸内細菌も脳の働きに影響しているということがわかってきました。いろいろな用語が使用されており、まだどれも定着していませんが、「脳ー腸ー腸内細菌」の3つの相関が注目を集め始めています。

 

腸内細菌と脳との関係の表れる例として論文を1つ紹介しましょう(1)。
この論文では、強制的に運動をさせられたマウスと自分の意思で能動的に運動をしたマウスの腸内フローラを比較しています。

その結果、能動的な運動をすることにより、盲腸と糞便の全細菌の中でTuricibacter属の占める比率が低下することが発見されました(※)。このTuricibacter属は腸管免疫の働きや腸炎と関わりがあるのではないかと考えられ始めている細菌です。また、この論文を発表したグループは、同じ条件の運動により能動的な運動は腸炎を緩和するのに対して、強制的な運動は腸炎を悪化させることを更に前の論文で報告しています(2)。

脳腸相関

脳腸相関

 

 

 

 

 

 

アスリートやトレーナーの方は経験としてご存知だと思いますが、同じ負荷の運動を行っても、その目的意識の高さによって得られる効果は全く変わってきます。

もちろん、それは体の動かし方や状況判断など、実際のパフォーマンスに直結することへの影響が大きいでしょう。

しかし、この論文は運動時の意識の違いが腸内フローラにまで影響していることを報告しています。つまり、運動時の意識の違いがコンディショニングにまで影響する可能性を示しています。

目的意識を伴わない運動はパフォーマンスが向上しないどころか、コンディショニングを低下させるだけになってしまうのかもしれません。

 

「脳ー腸ー腸内細菌」の相関は、腸内フローラの改善による集中力の向上や、メンタルを整えることによる腸内環境の改善など、アスリートのパフォーマンスやコンディショニングにも繋がり、AuBも非常に強い関心を寄せています。

 

※細菌の分類「属」について、以前の記事で説明をしています。

細菌の分類についての記事「ファーミキューテスって本当にデブ菌?」はこちら

  1. Allen JM, Berg Miller ME, Pence BD, Whitlock K, Nehra V, Gaskins HR, White BA, Fryer JD and Woods JA. 2015. Voluntary and forced exercise differentially alters the gut microbiome in C57BL/6J mice. J Appl Physiol. 118(8):1059-1066.
  2. Cook MD, Martin SA, Williams C, Whitlock K, Wallig MA, Pence BD and Woods JA. 2013. Forced treadmill exercise training exacerbates inflammation and causes mortality while voluntary wheel training is protective in a mouse model of colitis. Brain Behav Immun. 33:46-56.