2018年04月13日

〜選ばれし者〜 ウィルチェアーラグビー日本代表 今井友明選手【前編】

以前Activityでパラリンピック競技でもある「ウィルチェアーラグビー(車いすラグビー)」についてご紹介しました。(http://aub.co.jp/activity/939/

今回と次回は、そのウィルチェアーラグビー日本代表でRIZE CHIBA所属の今井友明(いまい ともあき)選手のインタビューを前編後編にわたってお届けします。前編の今回は、ウィルチェアーラグビーの魅力について語っていただきました。


本日はよろしくお願いします。
早速ですが、現在は三菱商事の社員として企業に所属されている今井選手ですが、今井選手がこの競技と出会ったキッカケを教えていただけますか。

(今井選手)官野一彦(かんの かずひこ)選手に誘われたことがきっかけでした。元々車いすバスケを一緒にやっていたこともあって、熱烈にラグビーに誘われました。車いすバスケとラグビーでは競技特性が180度異なるので、バスケをやっていた私としては「そんなにおもしろいのかな?」と半信半疑でした。

ただ実際にプレーをしてみると、ぶつかり合うだけのスポーツではなく、綿密な戦略を立てながらプレーをしなければならないので、奥深く面白い競技だなと感じてラグビーに転向しました。


車いすラグビーについてプレー映像を拝見しましたが、ぶつかり合いが本当に激しい競技ですよね。

(今井選手)車いすがぶつかるので、車いすの金属音が激しく響きます。特に体育館なのでかなりの音がしますね。でも音は激しいですが、実際体にかかる衝撃はあまり来ません。

今井選手の持ち味やストロングポイントを教えてください。

(今井選手)私のポジションはディフェンスです。オフェンスは相手を倒しながら攻めていきますが、ディフェンスは味方を守りながらゴールまでの道を作っていく役割をします。

ゴールのお膳立てをしている姿をみていただけると嬉しいですし、ボールを持っていないところでいかにスペースを作れるか、ぶつかり合う音なども一緒に楽しんで盛り上がっていただきたい。


今の日本代表はどのような戦術を組まれているのですか?

(今井選手)ウィルチェアーラグビーは、4対4で行い各選手の持ち点が8点になるようなチーム編成を行います。持ち点というのは、障害度が高い程持ち点が低く(最小0.5点)、障害度が軽度になる程持ち点が高く(最高3.5点)なっています。

例えば、3点の選手を2人、1点の選手を2人の構成にするのか、3点の選手を1名、2点の選手を2名、1点の選手を1名の計4名構成にするかでも全くプレーは変わってきます。

またボールがコートに入ってから40秒以内にゴールをしなければならない、12秒以内にハーフラインを越えなければならない等時間にも細かなルールがあります。この時間管理も戦術の一つです。

ファウルをしてしまうと、1分間ゲームから外れなければならなかったりと時間的にも人数的にも厳しい状況になってしまうので、如何にファウルをしないようにボールコントロールできるかがキーになります。

現在、日本は世界ランキング4位です。1位はオーストラリア、2位はアメリカ、3位はカナダというランキングになっています。

3月にイギリスで大会がありましたが、世界ランク5位のイギリスは初戦アメリカに勝利するなど、番狂わせが多いのはイギリスの特徴です。対戦相手との相性やチーム編成によって勝負は異なりますので、ランキングによって強い、弱いはあまりないかもしれません。


普段はRIZE CHIBA(ライズ千葉)というチームに所属されていますが、日本代表の練習や試合もあると思います。比率はどのくらいですか?

(今井選手)土日しかチーム練習はできないですが基本的には緻密な戦略を立てられるかの練習を行います。

代表は月1回の合宿を行っており、チーム練習は週3回程度です。それ以外の時間は個人トレーニングを行っており、そこでチームに合流したときに良い練習ができるように、準備を行います。

また代表で学んだプレーをクラブにどうフィードバックできるか、チームの底上げを行うことも考えていますし、それは日本代表の底上げにもなると信じています。


個人トレーニングとは主にどのような練習をされるのですか?

(今井選手)個人練習はジムトレーニングと走り込みを行います。例えば体育館を八の字に10分間走り続けるメニューを3セット程度こなしています。あとは、チェアースキルを磨くことを中心に練習しています。


プレーに使う車いすは、選手により異なりますか?

(今井選手)ウィルチェアーは1人1人オーダーメイドです。私は、通常タイヤの角度を17度で設定をするところ15度で設定しています。これはスピードを重視するためにそのような設定をしています。通常17度のようにタイヤが外に開いていると車いすも安定するので倒れにくくなります。

そして現在日本製のウィルチェアーはありません。

私はニュージーランド製を使用していますが、これはディフェンスに向いている車いすになっています。この車いすはチタン製で軽さを追及していて例えば手に力が入らず思い通りに動かない障害度数が高い選手ほど、チタン製をつかって漕ぐ動作に力を必要としないものを使用します。一方で、障害度数が低い選手はスピード性を求めて重い車いすを使っています。同社(三菱商事)所属の池崎選手は重いタイプのアメリカ製を使っています。

今井選手試合画像
日本製の競技用車いすメーカーありそうですけどないのですね。

(今井選手)例えばアメリカではウィルチェアーの競技人口が500名程度。これは日本の約5倍にあたります。日本の競技人口は現在100名程度です。メンテナンスは日本の車いす屋さんがやってくれますが、競技人口が少ないためにメーカーを作るほど日本には需要がないのは事実です。

ただし、競技人口が少ないのには理由があってウィルチェアーラグビーのルールとして、「四肢麻痺」障害を持った人が対象という少し変わった競技特性があります。つまり障害があればだれでもできるバスケとは異なりますので、私はウィルチェアーラグビーができる「選ばれし者」だと思っています!


四肢麻痺がないと競技が出来ないということは知りませんでした!
ちなみにあれだけ激しくぶつかると車いすがパンクしたりと試合中故障することもあり得ますよね。

(今井選手)そうなんです。スペアタイヤは全選手持参をしていて、万が一パンクをしたらタイヤ交換の時間が1分間与えられます。その間に自分でタイヤを直します。タイヤ交換は簡単に行えるようになっているので、自分でもできますが、例えば車いすのフレームなどが壊れてしまうときにはメカニックスタッフが溶接など行ってくれます。代表チームにいくと必ずメカニックが帯同してくれます。車いすバスケはぶつかり合うことが禁止なので、車いすが激しく壊れることもないようですので、メカニックスタッフまでは帯同していないと思います。

なので、ウィルチェアーラグビーではベンチワークが非常に大切になります。このスタッフの動きを見ているだけでも面白いと思います。

という所で、次回後編は、今井選手の食生活や日本と海外での試合の違いについてお話しをお聞きします。
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今井友明(いまいともあき)選手プロフィール
生年月日: 1983年3月12日
出身地:   千葉県我孫子市

主な競技歴:
2009年             本格的にウィルチェアーラグビーの練習を開始
2013年             ウィルチェアーラグビー日本代表強化選手に選出
2014年8月        世界大会第4位(デンマーク・オーデンセ市)
2015年10月      アジア・オセアニア・チャンピオンシップ優勝(日本・千葉市)
※ 同大会で1.0クラスのベストプレーヤー賞獲得。日本代表はリオ・パラリンピックの出場権を獲得

2016年    リオ・パラリンピックに日本代表として出場し、銅メダルを獲得

現在もウィルチェアーラグビーの日本代表として2020年東京パラリンピックでの金メダル獲得を目指し、挑戦を続けている。

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インタビュアー:鈴木基生(AuB株式会社 腸内細菌研究員)